会長挨拶

ご挨拶

拝啓

この度、第29回日本小児心筋疾患学会を土井庄三郎先生のご好意もあり、東京医科歯科大学で開催させて頂くこととなりました。

小児期の心筋疾患は、いまだに診断や治療に難渋することが多い領域とされています。

今回のメインテーマを「小児心筋疾患を識る -明日へのいのちの架け橋- 」としました。
前々回、前回の学術集会ではEXCOR、植え込み型VADなどの重症心不全関連治療に焦点が当てられておりました。今回もその流れを踏襲し、3名の先生方に重症心不全例に対する治療や導入のタイミング、再生医療の現状についてご講演をお願いしました。

巷の世界中で猛威を振るっているCOVID-19は、RNAウイルスの中で最大のゲノム、約30kbの一本鎖RNAを有しており、細胞中で産生されるウイルス量はインフルエンザウイルスの約100分の1とされていますが、特異抗体を持たないヒトの脆弱性を痛感させられます。話は遡りますが、1665年、ロンドンを中心にペストが大流行した折、アイザック・ニュートンが通っていたケンブリッジ大学が閉鎖に追い込まれました。生まれ故郷に戻った彼は、何もすることがない自由の時間を得て、後に万有引力の法則の礎となる「木から落ちるリンゴ」を観たのもこの頃とされています。「ニュートンの三大業績」の仕事は、いずれもペストの惨禍を逃れた期間中になされています。

諸外国への渡航はおろか、学会参加もままならない日々が続きます。ほぼ禁足状態にあるとはいえ、その分自由の時間を見出したり、インターネットを通じての新しい学問のプラットホーム作りも考えられるかと思います。こうした逆境を乗り越え、本学会を開催することで、若い先生方の活発な討論の場となり、今後の日常診療に役立つ有意義な機会になることを強く願っています。

敬具

2020年4月吉日

第29回日本小児心筋疾患学会学術集会

会長 上田 秀明

(神奈川県立こども医療センター 循環器内科部長)