代表幹事 就任挨拶
このたび代表幹事を拝命いたしました富山大学小児科の廣野恵一です。創設以来、本学会は先輩諸氏の尽力のもとで発展を遂げ、わが国における小児心筋症診療・研究の灯を絶やすことなく守り続けてまいりました。その歩みに深い敬意を表するとともに、バトンを託された重責を痛感しております。
小児心筋症は希少疾患ながら、死亡や心移植率が高率な深刻な疾患です。成人領域に比べエビデンスレベルの高い研究は少なく、このエビデンス不足が最大の課題となっています。一方で、治療の選択肢は徐々に拡大しています。新しい心不全治療に加え、サルコメア阻害薬や活性化薬といった新規薬剤の開発、補助人工心臓(VAD)の小児適応拡大、そして心移植の機会も増えつつあります。また、思春期から成人医療へのトランジションにおいても継続的な診療体制の構築が急務となっています。
この現状を踏まえ、本学会が取り組むべき使命として以下の点に注力してまいります。第一に、小児心筋症に関する質の高いエビデンス基盤を確立することが不可欠であると考えます。希少疾患ゆえの症例数の壁を乗り越えるためには、個々の施設での経験則を超えた、体系的な知見の集積が必要です。第二に、医療の地域格差も問題です。子どもたちが生まれ育つ地域に関わらず、必要な医療を適切なタイミングで受けられるよう、一般小児科医から専門医へのシームレスな体制を確立し、診断から専門治療開始までの時間短縮を図ることも重要な課題です。第三に、小児の心筋症における遺伝医療の質向上と家族支援の充実に力を注ぐ必要があります。医療の標準化と質の担保に取り組むとともに、患者・家族の心理社会的ニーズに応える支援体制を強化することが重要です。第四に、デジタル技術とAIを活用した精密医療の実装も重要な課題です。デジタルイノベーションによって、多様なデジタル情報を統合・分析し、個々の患者に最適な治療選択と予後予測が可能となりつつあり、小児心筋症医療においても新たな可能性を切り拓く必要があると思います。
小児心筋症は希少でありながら、患者・家族にとって人生を大きく左右する重篤な疾患です。しかし、科学の進歩と医療者・研究者・患者家族の連帯によって、確かな未来を切り拓くことができると信じています。一歩一歩、エビデンスを積み重ね、最適な診療体制を構築し、小児心筋症に苦しむ子どもたちの未来を明るく照らしていく—この使命に全力で取り組む所存です。
皆さまの一層のご指導とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げ、就任の挨拶とさせていただきます。
代表幹事 廣野恵一
(富山大学)
日本小児心筋疾患学会 幹事名簿 (2025.5月更新版)